21

3月

2013

はてしない物語

米国心理学会があげる効果的なストレス解消法は

エクササイズ&スポーツ

礼拝、読書、音楽鑑賞

家族や友人と過ごす、マッサージ、散歩

ヨガや瞑想、クリエイテイブな趣味の時間

だそうです。

私はというと、

ストレス解消法の第一は散歩と読書ですかね。

特に家事や料理で疲れているときは

全く関係のない本を読むのが一番いいみたい。

そんなわけで、久しぶりにファンタジーを読んでみました。

 

はてしない物語〈上〉〈下〉

〈ミヒャエル・エンデ作 岩波少年文庫〉

 

息子が最近ファンタジーとSFにはまっていて

ファンタジーを読むなら、やっぱりミヒャエル・エンデは外せないねえ。

という話になり、

本棚にあった本をペラペラめくっていたら、もう止まらなくなって

一気に読んでしまいました。

 

はてしない物語というと、映画「ネバーエンデイングストーリ」の原作です。

物語はこう。

 

バスチアンは、たまたま入った本屋で一冊の本を黙って持ちだしてしまいます。

本のタイトルは「はてしない物語」

学校の屋根裏部屋にこもって読み始めた物語は

 

ファンタジェーン国が虚無によって、崩壊の危機にひんしており

その危機を救うために選ばれた少年アトレイユ

幸いの龍フッフールとともに、ファンタジェーン国を救う方法を探るたびにでます。

やがて、おさなごごろの君に新しい名前をつけることが、国を救うことだと知ります。

けれどどうやって、名前をあげればいいのか。

 

はてしない物語の中で「はてしない物語」を読むバスチアン

という2重構造になっているのですが

実は、そのバスチアンの物語を読んでいる私がいるわけですから

物語は3重構造になっているのです。

 

物語はおさなごころの君に名前を付けられるのは、ファンタジェーン国の生き物ではなく人間の子供でないとダメだということがわかり

バスチアンが名前をつけてファンタジェーンを滅亡から救う

と、ここまでが上巻

 

そしてそこから、ファンタジェーン国に入ったバスチアンの物語が始まり

アトレイユの物語を読んでいたバスチアンという構造が

バスチアンの物語を読んでいる私、という構造にスライドする。

 

そうなると、自分自身も一段階物語に入った感じになり

バスチアンの、一つ一つの心の動きや行動にハラハラしたり、イライラしたり

バスチアンから目が離せなくなるのです。

 

バスチアンは自分の物語の中で、なんでも望むことが叶うのですが

望みがひとつ叶うごとに、大事な記憶を一つ無くしていくのです。

大事な記憶をすべてなくした時、どんなことがおこるのか・・。

     ・・と、この先は、ぜひぜひ読んでみてください。

 

おとなになるとは、どういうことか

自分がおとなになるにつれて、なくしたものは何だったのか。

 

山田詠美さんの「ぼくは勉強ができない」という小説があって

(この本も、めちゃ面白いです)

そのあとがきに、山田詠美さんが

おとなになるということは、進歩することではなく

むしろ、進歩するべきではない領域を知ることだ

と書かれていたのを思い出しました。

 

子供の頃は、すべての価値基準は

自分の心の中にあったのに〈楽しさやうれしさや悲しさや悔しさや〉

おとなになるということは

利益や地位や名声というものさしで計るようになることかもしれません。

 

ずーっと前の記憶の彼方にある

ワクワクやドキドキや、憧れや、

ただわけもなく好きだったこと

夢中になったこと

 

カップケーキがオーブンの中で膨れる変化を

ずーっとオーブンの前で眺めていた頃や

固い米がふっくらしたごはんに炊き上がる不思議さや

フライパンで料理している時に立ち上るいい匂いにワクワクした気持ちや

 

でも、だからといって、ずーっと子供の頃のあの気持のままでいいのかというと

それではダメで

ある意味、人として大人になる過程も確実に必要で

その大人としての成長の中で、いったん子どもの記憶をなくしてしまわなければ

なくしてはいけないものが何なのかを知ることはできない。

 

自分自身がおとなになった過程を思い出しても

子どもたちが成長していく頃のことを思い出しても

成長の時期は、前と上ばかりしか見ておらず

そういうすごい力がないと大人には、なれない気がする。

 

けれどあるとき、ふっと立ち止まる時が来て

自分はいったい何をしているんだろうと、歩いてきた道を振り返った時

ああ、なくしてはいけない物の価値が、はじめてわかるようなきがするのです。

 

振り返る時期は、人それぞれ違っていて

でも、大人になっても、これだけは絶対無くしてはいけないものに気づいたなら

もう一度あのことに帰って、大切なモノをこの手につかむことはできるのだと思う。

 

仕事で料理のレシピを書くとき

大人の頭で料理の作りやすさや、材量の手に入りやすさやコストを考えながら

その一方で、その料理を作りながらワクワクしたりドキドキしたするということ。

その両方を、大切にできるということ。

ここが絶対進歩させてはいけない領域。

 

自分も、かつては子供だったことを思い出して

大事なものを見失っていないか

もう一度考えるきっかけを作ってくれる、オススメの一冊です。