でいりいおくじょのBLOG

2020.06.10

読書日記「天上の葦」(上)(下)

太田愛さんの3部作

ついに読み終わりました!!

 

「天上の葦」(上)(下)(太田愛著 角川文庫)

 

「犯罪者」「幻夏」と続く3部作。

話自体は、それぞれに完結しているので

全部読まなくても、まったく問題ないのですが

 

鑓水、修二、相馬の3人トリオが、もう自分の知り合いみたいな気持ちになってしまい

この「天上の葦」を読み始めたときも

友人と会うみたいな感じで

「久しぶり~、元気だった?」っていうような気持になりました。

 

前の本に出てきた人が、こっちの本にも出てきたりするから

そういうところでも、なんか、懐かしい気持ちになるのかもね。

 

今回は、

渋谷のスクランブル交差点で、一人の老人が

天を仰いで亡くなるところから始まります。

 

老人の死因は病死。

そこには、何の事件性もありません。

 

ところが、老人が天を仰いで亡くなる時

いったい何を見ていたのかを調べてほしいという依頼が

鑓水のところに舞い込みます。

 

2週間以内に調べることができれば、報酬は一千万円。

 

それとは全く関係ないところで

相馬は、ある公安の警察官の失踪にからむ捜索を依頼される。

 

老人は何を見て死んだのか。

そして、行方不明の警察官はどこにいるのか。

 

全く関係ない事件が、

全く関係ない状態でどんどんどんど広がっていき

いったい、これは、どうなっていくんだろうと読み進めていくと

いつの間にか、少しずつ、点と点でつながって、大きな大きな広がりになっていく。

 

ミステリーというのは、

この風呂敷の広がりの大きさと

広げた風呂敷が、いかにテンポよくきれいに収束していくかが

おもしろさのポイントなんだけれど

 

太田愛さんの作品は、

風呂敷の広がるスピード感が、とにかくいいんです。

最初は、これとこれは、いったいどうつながっていくんだろう

という、わかりそうで分からない、もやもやだけがどんどん広がって

じらして、じらして、じらして進み。

 

ああ、何か、もう少し教えてよ~って、

ぎりぎりまで、じらされるんです。

 

で、いざ風呂敷をしまう段になると

それはそれは、見事なくらい、すごいスピード感と手際で

きれいに収束する。

 

いやあ、今回もやられました。

 

今回は、途中戦争の話など合って

かなり、重たいところもあったのですが

 

今回も素晴らしい作品でした。

こんな重たい話で、テーマもずっしりと心に響いたのに

なぜか、すかっとして

良い人たちの、やさしさとか、温かさとかが、

しっかり心に残ります。

 

ミステリーなんで、ネタバレになるとよくないので

詳しくは書きませんが

面白くてハラハラするだけでなく

報道と、真実と、権力について、いろいろ考えさせられました。

 

それにしても、

太田愛さんの小説は

とにかく食べ物がよく出てきて

登場人物が、明さん、よく食べて飲む。

ご飯も甘いものも、お酒も、ジュースも

とにかく、食べて飲む。

 

そこがまた、リアリテイ―があって

すごくいい。

 

鑓水は、今回の話の中では

シーフードのパエリアを作っていました。

 

操作の途中で、ルマンドを食べるシーンがあって

ルマンドにかぶりついたとき、ハラハラとかけらが落ちるところがあるんだけれど

それを読んだら、めちゃめちゃルマンドが食べたくなって

買いに走りました。

 

なんですかね、

このリアリテイ―。

 

そういうところも、すごく魅力

 

とにかく、面白いです。

おすすめ。

 

2020年6月9日天上の葦

コメント

  1. マカロン より:

    読み終わりましたかー。私も今読み返しています。鑓水、修司、相馬のそれぞれのエピソードも出てきて、前の話との絡みも面白いですよね。
    私は杏ちゃんのドラマの花咲舞が黙ってないで、上川隆也さんが演じていた役が相馬さんだったので、同じ名前繋がりでこの本の相馬さんに上川さんがはまってるんです。
    奥薗さんは読みながら、この人って配役を考えたりしてますか?
    私は鑓水と修司は浮かばず、相馬さんだけなんですけどね。

    次の話、早く出て欲しいですね。

    1. 奥薗壽子 より:

      太田愛さん、本当にハマっています。いいですねえ~。
      内容は深くて、ちょっと毒もあるんだけれど(そこがまたいい)、でもいい人たちがいっぱい出てきて
      すごいです。
      相馬さんは、上川さんですか。
      私は読んでいる間中、鑓水は、一貫して吉田鋼太郎さんで、修二は、ちょっと迷ったんだけれど、野村周平さん
      相馬が一番、ぴったりの俳優さんが思い浮かばなくて
      今のところ、一番近いのは加瀬亮さんかな。
      どうですか、このキャステイング?

  2. Yuri より:

    奥薗先生
    いいですねえ!天上の葦、ムチャムチャ面白そうです。いつも興味深い本をご紹介してくださり、ありがとうございます😊。しかし歴史ものからミステリまで、ジャンル幅広いですね!私もかなり活字中毒なのですが、先生の読書量には全く追いつきません😅。一日24時間では足りませんね。
    *漫画ですが最近中村真理子の「卑弥呼」にどハマりしました。

    一昨日、音楽の勉強と研究のため、先生の故郷・京都に参りました。いやー、観光客が消えた京都…..すごく静か!お店も閉まっているところがチラホラ。河原町三条辺りを歩いていたのですが、以前とは別の町のような…まだまだコロナの影響を感じました。

    1. 奥薗壽子 より:

      太田愛さんのミステリーは、本当にハマります。
      「犯罪者」から読むのがおすすめ。そのほうが登場人物に愛着がわきますよ。
      卑弥呼もいいですね。読んでみたいです。
      京都に行かれたのですね。インバウンドに頼れなくなっているので
      コロナの収束後も、まだまだ大変な状態が続きそうで、とても心配しています。

      また、京都に行かれる機会がありましたら、ぜひぜひ、様子を教えてください。

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