でいりいおくじょのBLOG

2014.09.20

天ぷらを失敗なくサクサクに揚げるコツは衣にあり

天ぷらを上手にさくっと揚げるにはどうしたらいいですか?

という質問をよくされます。
 

天ぷらを上手に揚げるコツは

油の温度や、入れるタイミング、具の切り方など、いろいろあるとは思うのですが
 

衣というのは、かなり大事だと思います。

というのも、てんぷらの衣って

料理本などに書かれているごく一般的な作り方は

卵を溶いたところに氷水を入れて、そこに小麦粉を混ぜます。

氷水を使うのは、冷たい方が小麦粉の粘りが出ないためで

粉も水も冷たくして、粘りを出さないことがからりと揚げる一番のコツだといわれています。
 

でも、私は、ここでいつも疑問に思うんです。
 

確かに小麦粉の粘りを出さないことは大事かもしれないけれど

全部を冷たくしてもからりと揚がらないから

多くの人が、どうしたら上手に天ぷらを揚げられるのか、わからないでいるのではないかと思うんです。
 

つまり、冷たくするだけで本当に誰でも上手に揚げられるのか?
 

私自身、駆け出しのころはてんぷらが苦手で苦手で

どうやっても上手に揚げられませんでした。

もちろんすべて冷たくして、粘りが出ないように細心の注意もしてやりました。

でも、うまくいかない。

だからこそ、原因は温度以外にあるのではと思ったのです。
 

そうして、犯人として行き着いたのが卵でした。
 

衣に卵は必要だろうか?

衣に卵を入れる理由は何だろう?
 

ホットケーキやチヂミなどを想像すると

卵を入れることによって、ふんわり柔らかい食感にはなると思うんです。

でも、卵を入れることで、衣の揚げ上がりがカリッと軽くなるってこと、ありますかねえ?

ピザ生地だって、卵を入れてこねるとふんわり柔らかくなる。
 

そこでやってみたところ

卵を入れずに、小麦粉と水だけで衣を作った方が

失敗なくカリッと揚がるという結論に達しました。
 

やってみて、これは確実にそうだと、自分では思うのだけれど

それじゃあ、なぜ卵を入れるレシピのほうが一般的なのか?
 

そこで調べてみました。
 

天ぷらというと江戸時代を代表する屋台料理。

(そば、ウナギ、すし、てんぷらが江戸前の四天王)
 

「大江戸美味草紙(おおえどむまそうし)」(杉浦日向子著 新潮社)
 

によると、

もともと浪速では、魚のすり身を揚げたものが天ぷらとして売られていました。

さつま揚げのようなものですね。

(たしかに、さつま揚げを西の方では天ぷらといい

東の人より、西の人のほうが、確実にさつま揚げを好きだと思う)
 

浪速から江戸に芸妓と駆け落ちしてきた男が、

これをヒントに、江戸前の魚を揚げて売ったらどうかとやり始めたのが天ぷらの始まり。(その当時、野菜を揚げたものはあったが魚を揚げたものは江戸にはなかった)
 

「天麩羅」という字をあてたのは、江戸を代表する人気作家山東京伝。

浪速からやってきた天竺浪人(世俗を離れた能天気なプー太郎という意)の天と

麩は小麦粉で作る、羅は薄物の意味で

小麦粉で薄物をかけた揚げ物という意味の字らしい。
 

この当時、衣に卵は入っていません。
 

その後、てんぷらのバリエーションとして生まれたのが

金ぷら、銀ぷら。

金ぷらは衣に卵黄を、銀ぷらは卵白を加えたもの。
 

「日本料理由来辞典」(同朋社)

によると
 

金ぷら、銀ぷらは江戸両国柳橋の深川亭文吉が創始者で

江戸時代末期に大流行したのだそう。
 

その流行の金ぷらのつくり方が後世に伝わり

その後、大正、昭和初期にかけて、小麦粉と卵を使った衣が一般的になったのだそう。
 

家庭料理というものに、もともとレシピはなく

料理屋さんのつくり方や、料理学校で作られたレシピが、家庭に入ってきて

家庭料理のレシピというものが形作られたので

この時入ってきた天ぷらの衣のつくり方が

そのまま、何の疑いもなく、受け継がれてきたと考えられます。
 

となると、

小麦粉を水で溶いただけの衣で揚げることは、もともとの天ぷらのやり方なので

この方が、はるかに自然です。

しかも、その方が簡単で、失敗なくからりと揚がる。
 

けれど、ここで満足してはいけません。

さらに、誰でも失敗なくからりと揚げられる工夫はないか

と考えまして
 

行き着いたのが、ベーキングパウダーを入れる方法。
 

もともと洋風の揚げものとしてフリッターというのがあるのですが

見た目は天ぷらそっくりなんですけど、衣にベーキングパウダーを入れることで

サクサクに揚がるんです。
 

衣にベーキングパウダーを混ぜることで

加熱途中で炭酸ガスが発生し、衣の中に小さな気泡がたくさんでき

サクサク食感になるというわけです。
 

これを真似しない手はありません。

もちろんベーキングパウダーを入れなくてもからりとは揚がります

でも、ほんの少し入れるだけで、加える水がぬるかろうが、衣を混ぜて粘りが出ようが

サクサクに揚げることができるのです。
 

天ぷらが上手に揚げられると

なんだか、すごーく料理上手になったみたいで、優越感にひたれます。
 

是非是非お試しあれ。
 

************************
 

今日の「日めくりレシピ」は「つる豆のフリット」
 

フリットというのはイタリア語で揚げ物のこと。

天ぷらと書くより、フリットと書いたほうが、かっこいいかなと思って、書いてみました

要は、てんぷらです。
 

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