でいりいおくじょのBLOG

2014.09.15

読書日記「フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠」(マイケル・モス著 本間徳子訳 日経PB出版)

砂糖、塩、脂肪。

この3つは食べたいという要求の源となる成分。

これらを加工食品の中にうまく入れ込むことで

消費者のもっと買いたい、もっと食べたいという気持ちを自在に操ることができる。

これがフードトラップ。
 

そんなアメリカの食品加工メーカーの取り組みの歴史と、

アメリカ国民の健康をむしばみながらも前進し続けた軌跡を描いたのがこの本です。

例えば砂糖

飲みたいという気持ちを起こさせる清涼飲料水を開発するには

「至福ポイントを見つければいい」
 

私たちは糖分が多ければ多いほどおいしいと感じるのではなくて

ある一定のレベルを過ぎると、好きだという気持ちが減少する。

そのピークとなるところが、甘さの至福ポイント。
 

この甘さの至福ポイントを操れば

甘いものを食べた後、すぐにまた甘いものが食べたくなるのだという。

これで、甘いお菓子も、飲み物も売り上げ上昇。
 

例えば脂肪。

甘みも、その他の基本の味も、すべて受容体を介して脳に伝えられるのだけれど

脂肪に関しては、その受容体がない。
 

なので普通、体には食べすぎを警告して、体重をコントロールする仕組みがあるのだけれど

脂肪にはそれが働かず、

気づかないうちにどんどん食べ過ぎてしまう性質がある。
 

さらに、食べ物の脂肪分が、目で見て気づかないようになっていると

(例えば、パンの上にバターを塗ってあるのではなく、パン生地の中にバターをたっぷり練りこんである、というようなこと)

食べる量は、10%近く、エネルギー量として約100㎉も増えるそう。
 

脂っぽさもなく、あっさり味、見た目にも油が見えないことで

そうとは気づかず、たっぷり脂肪分を食べていることになる。
 

例えば塩

我々の塩味センサーは口の中全体に分布しており、腸管にもある。

つまり、体のつくり自体が塩分を欲するように作られていて

排出するのは腎臓しかないことを考えれば

必然的に、塩分を好むようにできている。
 

しかも塩をたっぷり入れることで

原料の悪さ、よくない味や香りも、うまく隠すことができる。
 

いかに砂糖、脂肪、塩を自在に食品の中に入れ込むか

それが、その食品の売り上げを左右する。

売上を上げるためには、多くの砂糖、脂肪、塩を添加する必要がある

多く加えれば、もっと食べたくなり、

大量の塩分、当分、脂肪分を日常的に口に入る。
 

その結果、消費者の肥満や高血圧を極端に増加させることになった。
 

企業のとして健康を考えないわけではない。

けれど、売り上げを落とさないことが最優先課題。
 

あの手この手で、とにかく消費者に買わせ続け、食べさせ続ける。

消費者には気づかれないように巧妙に仕掛けられる食品の罠。
 

ピュリッツアー賞受賞のジャーナリストが、

綿密な取材と内部資料を基に丁寧に書き上げただけあって、

アメリカの食品メーカーの実状を深く知ることができる

かなり衝撃的な一冊です。
 

しかし、この本は単に食品メーカーの内部暴露本ではなく

この本の結論として言っていることは
 

何をどれだけ食べるか、何を見るか、決めるのは私たち消費者であって

そのために、加工食品について、消費者ももっとよく勉強するべきだということ。

知ることが、自分を守ることにつながるということ。
 

これはアメリカの話なので、日本の食生活にそのまま同じことがいえるとは思わないけれど

今の暮らしの中に、便利な加工食品が大量に入り込んでいるのは事実。
 

私は家庭料理研究家という立場から

こういう、便利な加工食品や出来合いお総菜などをどう思うかという質問もよくされる。

私の意見としては、もはやこういうものを否定しては、私たちの生活は成り立たないところまで来ていると思っています。
 

家庭料理を大事にして

子供や家族に、できる限り手作りの料理を食べさせてあげることは素晴らしいとは思うけれど

女性も男性も仕事を持つ時代。

一昔前のように、手をかけて料理を作ることこそが愛情というのは、もはや理想論だと思う。

趣味や仕事を謳歌しつつ、家庭料理を守るためには、

加工食品ともお総菜とも、うまく共存していくしかない。

否定すれば、家庭料理そのものが崩壊する危険もある。
 

共存しながら、家庭料理として何ができるかを考えると

家庭料理に求められているものは、確実に変わってきているし

変わらなければならない。
 

加工食品やお総菜とバランスをとる。

そのためには家庭料理はより健康的な方向に軸足味を移す必要にせまられる。
 

不足しがちな野菜をたっぷり食べられることはもちろん

砂糖、塩、脂肪分を、できる限り抑えて、なおかつおいしくなければならない。

食生活のバランスをとる手段としての役割を、

便利に食べられる時代になればなるほど、家庭料理が負うことになると思うのです。
 

もちろん、いくら塩分を控えめでも、低カロリーで健康に良くても

作りにくかったり、おいしくなかったりでは意味がありません。
 

そうなると、ここからは家庭料理研究家の仕事です。
 

家庭料理の中にフードトラップをかける。
 

一見、普通の料理で

作ったら簡単で食べたらもちろんおいしい。
 

普通に、簡単にパパッと作って

簡単にできたのにおいしくて、また作りたい、また作ってほしいという気持ちになる

そんなレシピを、もっともっと紹介しなければなりません。
 

塩分やカロリーがきちんと考えられていて

繰り返し作って食べることによって

気づかないうちに、減塩ができていたり、野菜がたくさん食べられて体調がよくなり

肥満を予防し、適正体重になっていく

目指すはそういうレシピです。
 

たとえば

砂糖で甘くする代わりに、食品の持つ甘味を利用したり

口当たりを滑らかにすることで、脂肪の少なさを感じないように工夫したり

うまみを上手に生かして、塩分を少なくしても気づかないようにしたり。
 

フードトラップ、つまり食べ物の罠

家庭料理に仕掛けれた罠が、作る人と食べる人を、知らず知らずに元気にする。

そう言うレシピを考えていけたらいいなと思います。
 

最高のいたずらを考えるみたいにワクワクしながら

そんな罠をこっそり仕掛けていきたいなと

ひそかに企んでいるところです。
 

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今日の「日めくりレシピ」は「えのきつくね」

食べ応え十分ですが、実は半分がえのきなので低カロリー。

しかも、エノキのうまみで減塩効果もあり。

まんまと罠にはまる一品です。
 

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奥園壽子で検索してみてくださいね。

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