でいりいおくじょのBLOG

2014.03.14

読書日記 『空飛ぶタイヤ』(上)(下)(池井戸潤著 講談社文庫)

吉田戦車さんの場合、職業が漫画家だから

料理に逃避できるけど

私の場合、職業が家庭料理研究家だから

料理に逃避したくても出来ないんですよね、これが。

でも、人間逃避したくなる時は多々あるわけで

私の場合、逃避はもっぱら本。

逃避めし、ならぬ逃避本

試作しないといけない料理や、書かないといけない原稿があるというのに

本の世界に現実逃避。

池井戸潤さんの本は一旦読み始めると、どうにもやめることが出来ず

ついつい最後まで読んで寝不足になるパターンです。
 

池井戸潤氏というと、半沢直樹!!

確かに、ロスジェネ3部作

銀行内部の権力闘争的なものもすごく面白いのですが

『下町ロケット』とか『鉄の骨』のように

真面目な中小企業が、大手の会社や銀行と戦うような話のほうが

人間的な温かさや生きる勇気みたいなものが感じられて、私は好き。
 

この「空飛ぶタイヤ」の主人公は

赤松運送という中小企業の社長、赤松徳郎。

赤松運送の大型トレーラーのタイヤが外れて

前を歩いていた主婦を直撃、死亡事故を起こしてしまう。

これが物語の始まりです。
 

大型トレーラーの製造元であるホープ自動車は

赤松運送の整備不良を主張。

けれど、赤松運送側は、絶対に整備不良ではないと、真向からぶつかる。
 

ホープ自動車は

ホープ銀行、ホーブ重工などを持つ巨大ホープグループの中の同族会社。

その巨大同族会社を敵にまわして戦う赤松運送。

唯一の取引銀行であるホープ銀行からの融資差し止めや

被害者遺族からの訴訟を受け、窮地に追い込まれていく。
 

タイヤ脱輪事故は

赤松運送の整備不良なのか

ホープ自動車の構造的欠陥なのか。
 

実はホープ自動車は3年前にも、欠陥品を作り、リコール隠しをしていて

今回も闇改修をしているのではという疑惑が浮上。
 

世の中の正義としてのタテマエと会社の利潤から見た本音

社内の権力争いと、会社内での地位的保身

大企業の力に翻弄されていく中小企業の悲哀と

事実が微妙に歪められていくジレンマ
 

まじめに正直に仕事をしてきた中小企業赤松運送は

巨大グループ企業の力の前に最後の踏ん張りを見せるが

その前途は、もはや風前の灯。

運命に見捨てられたかと思ったその時・・。
 

テンポの良いストーリー展開と

勧善懲悪のわかりやすい人間関係の構図

今回もまた、池井戸ワールド全開です。
 

池井戸潤さんの小説のことを

現代版水戸黄門と書いている書評があって

うまいこというなあと感心したことがあります。
 

たしかに、いい人と悪い人がきちんとわかりやすく書かれていて

悪い人がきちんと最後はお裁きを受けるストーリー展開は

ある意味日本人好みなのかもしれません。
 

ただ、池井戸作品のいいところは

水戸黄門みたいな勧善懲悪でありながら

いい人が、完全な良い人ではなくて

どこか人間臭い、弱さやずるさや汚さや計算深さを持っていて

悪い方の人にもやっぱり、何処か温かい人間味がある。

いい人がいい人過ぎないところが

逆にホッとしたり、スカッとするんですよね。
 

確かにタテマエでは世の中のルールを遵守するべきだと思っていても

会社人間として、本音の部分では会社の利益も守らなければならず

大企業でも中小企業でも

その中にいる人はだれでも、その本音と建前の中で揺れ動き

なんとか折り合いをつけながら使い分けていく。
 

自分自身の中にある、本音と建前、善と悪

そういうものとうまく折り合いをつけながらも

やっぱり最後は、人間としての矜持とか誇りとか

そういうものを捨ててはいけないということを思う。
 

大企業でも中小企業でも

私の様にフリーのしごとでも

楽な仕事なんてないんだよね~。

時に逃げたくなる気持ちになったとしても

基本、やりがい感じてるやん。

何やかやいっても、やっぱり仕事好きやん

という結論に達するわけです。
 

現実逃避している場合ではない!!

さあ、がんばろっと!

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