でいりいおくじょのBLOG

2013.03.03

小さいときから考えてきたこと

「小さいときから考えてきたこと」
(黒柳徹子著  新潮文庫)
この本はある雑誌でおすすめの一冊として紹介されていて
徹子さんが小さい頃から、いったいどんなことを考えてこられたのか
ものすごく興味が湧いて、読んでみました。
この本は短いエッセイで構成されているのですが
最初の「赤い松葉杖」から、もうグイグイと引き込まれていきます。
 
徹子さんは5歳過ぎの頃に足の病気になられて
先生のお見立てでは、治っても松葉杖になるだろうと言われてしまいます。
隣の病室に、同じくらいの歳の女の子が入院していて
おそらくその子も同じ病気。
 
やがて、徹子さんは退院し、奇跡的な回復をし
普通に歩けるようになるのだけれど
ある日、道を歩いている時に
あの隣の病室に入院していた女の子が松葉杖で歩いているのに出くわし
自分の足で歩いている姿を見られたくなくて隠れてしまうのです。
 
その時徹子さんは、人というのは決して平等ではなくて
病気が治ることもいれば治らない子もいて
でも、自分は病気が治ったけれど
それは自分が偉かったわけでも、優しかったわけでもなくて
それはたまたまそうだっただけだということはよくわかっていて
だから、あの子に自分の足を見せたらダメだと思ったのでした。
 
その時の気持ちを
それをしっかり心のなかに大切に持ち続けておとなになった人が
黒柳徹子さんという人なのだと思わせる話でした。
 
そして、そのことをずーっと人として一番大切で必要なことだと信じていて
それがその後の活動へとつながっていくのだなあと思えました。
 
この本の中には
笑えるエピソードもたくさん書かれているのだけれど
やはり、なんといっても
ユニセフの親善大使としていかれたアフガニスタンの話は圧巻です。
 
絶望的な難民キャンプの中で
ノーホープとつぶやく大人たちの横で
子どもたちは、決して希望を捨てていないということに胸がつまり、
この子どもたちの希望を大人が奪っていいのかという
徹子さんのやるせない憤りが切々と伝わってきます。
 
赤い松葉杖の女の子を見て
行って話しかけてあげればよかったのに
という思いをずっと持ちつづたまま大人になった徹子さん。
だからこそ今、隠れたりしないで、目をそらさないで
できることをしようとされているのだ
ということに感動します。
 
本文中に引用されているエーリヒ・ケストナーの言葉
「大切なことは、自分自身の子どものころと、
破壊されない、破壊されることのない接触を持ち続けること。
大人が、子どもと同じ人間だったことは、自明でありながら
不思議なことに珍しくなっている」
 
徹子さんは
子供だった時の自分といまだに会話し続けている人なんだと思います。
 
そして私また、子供だった頃を思い出し
あのころ思っていたこと、嫌だったこと、好きだったこと
幸せだった光景、悲しかった気持ち
心の片隅に、かすかに残っているそういうものを思い出し
 
本当に大切にしたいものってなんだったんだろう
自分にとって幸せってなんだったんだろう
と考えさせてくれる一冊でした。
 

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