でいりいおくじょのBLOG

2025.06.08

読書日記「中野重治全集」より「ハイネの橋」

ちょっと前に講座の中で

中野重治の「ハイネの橋」というエッセイが良いという話がありました。

 

中野重治って、かろうじて名前は知っているけれど

全く読んだことがなく

ハイネも、恋愛の詩を書いている人、見たいイメージがあるだけで

全く読んだこともなく

 

中野重治とハイネを結び付ける要素が、私の中では全くなかったのだけれど

その話を聞いた時に、なぜか心が動いたんです。

 

本箱を探したら

中野重治全集がある!!

以前、何かがあって、興味を持ったことがあるのね。

まったく覚えてないんだけれど。

 

たまたまこのエッセイのことを知り

なぜか全集をもっていた

そこに何か、運命を感じまして

 

全集を全部読むのは無理だけれど

エッセイ一つなら、読めるなと思って

さっそく読んでみました。

 

ハイネの橋

「中野重治」ちくま文学全集 筑摩書房

 

読んでみると、いきなり面白いです。

 

これ、講演録で

中野重治がハイネについての講演をされているんですが

自分は、ハイネについて、まったく専門家でもなく

いろんなことに詳しいわけでもなく

たまたま、ハイネについて書いたら

それが、それは新しい見解だという事になって

講演を頼まれしまった、らしい。

 

自分は、まったく詳しくないんだけれど

ハイネについて話をするっていうの

なんか、いい人だなあ。

 

このエッセイのタイトルになっているハイネの橋って言うのは

ユダヤ人であったハイネが、ドイツを追われてフランスに亡命し

この二つの祖国の懸け橋になったって話

で、そこの部分も、すごく面白かったんだけれど

 

このエッセイで、考えさせられたのは

知るって、どういうことかって事でした。

 

知るっていう事のいちばん最初は何かっていうと

”偶然”。

 

先に知識があって、いろんな準備ができて

それから、もっと詳しく知ろうっていうんじゃなくて

たまたま、出会ったみたいな。

 

確かに、中野重治っていう名前は知っていたけれど

このエッセイに出会ったのは、偶然で

でも、その時に、なぜか、心が動いた。

 

そこが大事なんだな。

 

知りたいっていうんじゃなくて、何か惹かれるものがあったから

この本を読んだ

そういのが。

 

でも、正直、これを読んだくらいで

中野重治のことも、ハイネのことも、何もわからない。

でも何かが、確実につながった

 

知るって、あるもののとあるものの間に

ヒューっと橋が架かるみたいな事なのかもね。

 

でも、その橋は、とってもシンプルで

あちこち補強しないと壊れてしまう。

 

少しずつ、その橋を頑丈にしていくという事が

知るってことなのかな。

 

この繋がった橋を大事にしたいなら

壊れないように頑丈にしていかないと。

 

っていうか、

橋の向こう側にあるものが

自分にとって、すごく大事だと思ったら

橋が壊れてしまわないように、

手をかけずにはおれないよね。

 

でも、橋を壊れないようにするためには

大事なことは

橋について詳しくなる事じゃなくて

 

あちら側の事をわかりたいと思う事

そのために、こちら側の事ももっと分かろうとする事

 

分かる事じゃなくて

分かろうとする事

 

そこに行きつくな。

 

考えてみたら、いろんなことに当てはまる

 

詩も、エッセイも、ドストエフスキーも、リルケも、ゲーテも

偶然、ヒューッて橋が架かって

その橋を壊したくないって思った。

 

もっと言えば、これを学んでいる場も人も

ヒューって橋が架かった

大事にしたいって思った。

 

だからね

壊さないように

大切に大切にするために

 

分かりたいって思い続ける事

分かろうと、し続ける事

 

分からないままでもいい

 

分かってしまったら、行き来がなくなってしまうから

分からないまま

分かろうとし続けるのがいいのよ

 

橋でつながり続けたいなら

それが大事だな

 

 

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