でいりいおくじょのBLOG

2020.03.16

読書日記「ナイルパーチの女子会」

以前から気になってはいたものの

なかなか手に取ることができずにいた本

ついに読んじゃいました!

 

「ナイルパーチの女子会」 (裕木麻子著 文春文庫)

 

国内最大手商社に勤める美人OLの志村栄利子。

30歳。独身。実家暮らし。

年収一千万円越え。

きちんとした両親に育てられ、いい大学を出た才女。

 

その栄利子が、ここ2年ほどハマっているのが主婦ブロガーおひょうの書く

「おひょうのダメ奥さん日記」

 

肩の力の抜けた文章と、悪びれずダメさをひけらかす世界観に惹かれている。

 

おひょう・・・本名丸尾祥子

スーパーマーケットの店長をしている夫と二人暮らし。

夫の給料だけで暮らせるよう、基本的に節約を心掛けつつ卑屈にならず

皿洗いで嫌な気分になるくらいなら、一皿98円の回転すしを選ぶというのが生活のポリシー。

 

ある日、偶然二人は出会い

一緒にファミレスでお茶を飲み、自転車で二人乗りをするくらい意気投合・・・。

 

しかし、人との距離の取り方がわからない栄利子の一方的な接近により、

やがて二人の関係は崩壊していくことになります。

 

そして、祥子との関係が崩壊するにつれて

栄利子が自己崩壊し、

そして祥子も・・・。

 

そもそも、女性同士の話というところからして

どう見てもドロドロしてそうなイメージ

そのイメージ通り、心がえぐられまくりました。

 

心の深い部分をぐりぐりぐりぐりやられて、

なんでこんなことになっちゃうんだろうっていう、やりきれなさで

息をするのもつらい、つらい、つらすぎる‥。

 

はあ~~~~~~~~~。

つらくて切ない。

 

・・・・・。

 

ところで

表題のナイルパーチとは何か?

 

ナイルパーチはスズキ目あかめ科アカメ属の淡水魚

最大2メートルで200キロ

原産はアフリカ大陸

湖や河川に生息していて

見た目は銀色で美しく、観賞魚としても人気の魚。

 

食用として日本に輸入されていたこともある

味は淡白でクセがなく「スズキ」「白スズキ」として流通したが

最近は9割が欧米に輸出されている

 

…とここまで書くと見た目もよく、育ちもよく、食用にも、鑑賞にも利用範囲が広い、有益な魚のように見えますが

実は、別の湖などに放流されると狂暴化し

もともと居た魚を食べつくしてしまう肉食魚。

 

まさにいろんな顔を持つ魚なのです。

 

この本を読み進むうち

ナイルパーチはいったい誰なのか、という事を考えずにおれません。

 

まず、栄利子。

彼女は間違いなくナイルパーチだと思う。

 

いい家庭環境、いい大学、一流商社に就職、スタイルもよく美人。

まさに、ナイルパーチそのもの。

 

ナイルパ―チは群れることができないのに

それに気づかない栄利子は祥子に近づきすぎ、

そのことで、祥子も自分自身も崩壊させることになるのですから。

 

それじゃあ、祥子は栄利子の被害者かというとそうじゃないと思うんです。

 

栄利子の出現により、封印していた自分の本来の気持ちに気づいてしまう。

つまり

ダメ主婦のブログは人気があるものの

祥子自身は、それが本当の自分の求めている生き方ではないと。

 

結局

栄利子は祥子によって、自己崩壊し

祥子もまたは栄利子によって、自己崩壊していく。

これはまさに、ナイルパーチの共食い。

 

いやいや、そう考えていくと

この本に登場する人たちは、みんなナイルパーチに思えてくる。

 

ナイルパーチ

自分は少しも変わろうとせず、自分の周りの環境が変わっていくのをじっと待ち続ける魚。

そして、ナイルパーチの存在が、実際に環境をがらりと変えてしまい

増えすぎたナイルパーチは共食いを始める。

 

けれど、時がたてば

そこにもまた新たな生態系が生まれ

その生態系の中で、ナイルパーチは順応して生きていく

 

時に、別の魚になって、回転すしのネタになり

時に、訪米に輸出されて、いったい何の魚なのかわからないまま食用にされたり

また、ある時は観賞魚にされたり

いずれにしても、ず太い根性で生き抜いていく

それがナイルパーチ。

 

恐ろしくて、したたかで、でも生命力が強いナイルパーチ。

 

女性はだれでも心の中に、ナイルパーチを飼っているような気がしました。

 

栄利子も祥子も、自分の中にある本当の自分と向き合いながら、したたかに強く生きていくような気がする。

それでこそナイルパーチ。

あっぱれ、ナイス!パーチ。

2020年3月15日ナイルパーチ

コメント

  1. ゆり より:

    奥薗先生

    「ナイルパーチの女子会」紹介ありがとうございました。早速昨日書店で購入し、読み始めたところ…..
    止まらん!止まらん!面白すぎて。
    栄利子は最初は優秀なバリキャリなのですが、もう、序盤過ぎると痛い。なんというか、滑稽にさえ思えるほどの、同性(翔子etc)との関係における、不器用さ….それがまた、何故か一所懸命で、憎めない。もう、読みながら「友達って….何?もっと気楽なもんじゃん….」とか、栄利子のストーカーぶりにツッコミいれまくりながらも、あー、こういうのあるなあ、あったよなあ、とか、自分の体験を思い起こしたりしていました(自分は圧倒的に女子から追いかけられる方でした)

    女子はみんな自分の中にナイルパーチを飼っている….うん、そうかも、です。だから、絶妙な距離感は大事だと思います。増えすぎると共喰いしちゃいますし。

    しかし、栄利子も翔子も、それぞれの
    「母親」の生き方の呪縛みたいなものに、無意識に抵抗し、もがいているような気もしました。だからこそ、ピッタリと同一化できる対象を激しく求める(特に栄利子…..)んだろうか、とか考えさせられたり。
    興味深く、一気に読み終えました。読書っていいですね!一気に別世界に連れて行ってもらえるというか。
    ありがとうございました。
    また、奥薗先生の読書日記楽しみにしております!(もちろん普通の日記も!)

    1. 奥薗壽子 より:

      この本、いろな角度から読めるところが、また面白いなと思うんです。
      そうなんです、確かに親とか、育った環境も関係しているだろうし
      後は、ネットからの影響というか、知らず知らずのうちに、みんなと同じであることに安心してしまうような習性をもってしまうこととか
      その延長線上には、絶対失敗しないように、安全な事しか選ばない傾向とか
      それって、結局個性のないステレオタイプの人間を大量に作り出してしまうことになり
      そういう世の中って、逆に怖くないかなとか。
      いろんな問題提起があって、本当に色々考えさせられました。
      読み終わった後も、まだいろいろ考えていたりします。

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