でいりいおくじょのBLOG

2025.04.01

読書日記「よっちぼっち」

先日の写真展「神話7年目」の、

写真家 斎藤陽道さんが気になりすぎて

本を読んでみました。

 

「よっちぼっち」(斎藤陽道著 暮らしの手帳社)

 

この本は、奥さんとお子さん2人との暮らしを描いたエッセイ集で

「暮らしの手帳」に連載されていたものをまとめたものです。

 

奥さんのまなみさんとの結婚のなれそめや

2人のお子さんが生まれた時の事

そして日々成長していく子どもたちとの暮らし

が、温かい目線で描かれています

 

斎藤さんと奥さんのまなみさんは耳が聞こえず

2人のお子さんは聞こえる

そういう一家です。

 

異なる身体を持つ一家の愛おしい記録

と本の裏に書いていあります。

 

子どもたちとのコミュニケーションの取り方

そして、子供たちが言葉を覚えていく道程が

いわゆる耳が聞こえる家族とはちょっと違っていて

おお~、なるほど~、へえ~~~ってなりました。

 

それは、自分とは違う世界に興味がある

というのではなく

 

言葉を覚えるってどういうことなのか

話をする、コミュニケーションをとるってどういうことなのか

分かりあうってどういうことなのか

という事を、あらためて考えさせてもらうきっかけになったという意味

 

また、言葉について

今まで気づかなかったことに、気づかせてもらう事にもなりました

 

例えば

言葉には、音で伝える言葉

目や感覚で伝える言葉

あるいは頭で理解する言葉

いろんな言葉があるってこと。

 

耳の聞こえる子供たちは

外では耳で聞こえる言語を覚えていくのだけれど

家の中では、親と手話で会話することになる

つまり目や感覚で言葉を伝えることになるわけです

 

この本を読んで初めて知ったんだけれど

手話って、私たちが耳で聞いている言語を手で表しているだけじゃないんですよね

 

手話って、もっと感覚的な事で

物事をもっと感覚的にとらえて、それを手の動きで表しているみたいな。

だから、手話ができても、日本語の文章を書くのが困難な場合も多いのだとか

 

単純に考えて

そうなるとコミュニケーションが大変だなって思ったんだけれど

 

読み進めていくと、

いや、そうじゃないって思ったんです。

 

つまり、もともと私たちって

目で見て、肌で感じて

相手の気持ちを察する能力ってあるんじゃないかと思ったんです。

 

もともとは

そういう、口から発する言葉じゃないコトバで

繋がっていたんじゃないのかな。

 

それはつまり

顔の表情や、目の動きや、口の動かし方や

身体から発する感じとか

そういうので、通じ合えること

そういう能力が備わっているって事

 

けれど、いつの間にか

口から発する言葉にたよって

そこからしか、気持ちを察することができなくなってしまっているような。

 

ちなみに斎藤さんは

小さな頃は、補聴器をつけ

耳から聞こえる言葉を理解できるようになるようにという教育を受けるのだけれど

 

16歳で手話と出会って

20歳で補聴器を使うことをやめ

補聴器をやめたことで

一生懸命見るように努められたそう。

 

見る事って、つまり目で見るって事だけじゃなくて

目で見えていることの奥にあるものを、深く感じるってことでもあると思うから

そうやって、見えないものを感じる感覚をどんどん研ぎ澄ましていかれたんだろうな

って想像できます。

 

だからこそ、あの写真なんだと、深く納得しました。

 

結局

耳が聞こえるから、言葉を発して会話ができるから

分かりあえるって思っているけれど

そうじゃないなって思う。

 

聞こえるから分かりあえるんじゃなくて

 

大事なのは、分かりあいたいって思う気持ちの方なんだと思う

 

分かりたい、分かりあいたいって思って

必死で、いろんな感覚を総動員して

相手に向かい合ってみる

 

そこが大事なんだなって思う。

 

そうなると、耳が聞こえても聞こえなくても

関係ないし

 

むしろ、完全に分かりあえないってところからスタートすることで

少しでも分かりたいっていう強いきずなになる気がする

 

なんか、良い本だったな。

写真を見た時と、同じような感覚。

心の深いところがじわっと温かくなるような感覚

そんな感じになる本でした。

 

これ、おすすめです。

コメント

  1. なっちゃん より:

    暮らしの手帳、良いですね
    そこで連載されたのが
    一冊になってるんですね。
    今は書店、セルフレジになってる
    店あるんですね。
    本のカバーも置いていて
    自分で取るんだよと昨日話して
    ました。
    私は、昨日プレゼントされた本
    読もうと思います。

    1. 奥薗壽子 より:

      そうなんですか。本屋さんもセルフレジ。
      時代を感じますね。
      本屋さんも少なくなってきているので、頑張ってほしいなって思います。

  2. 大阪市のまぁちゃん より:

    奥薗先生😢悩み事とかグチとかいっぱいあります。。また時間がある時に書かせていただきます。。暗い内容のコメントですみません

    1. 奥薗壽子 より:

      ストレスたまってるみたいね。
      何でも書いてみて、書いたら少しは楽になるから。

      1. 大阪市のまぁちゃん より:

        奥薗先生。。感謝です。。ありがとうございます。。

        1. 奥薗壽子 より:

          まぁちゃん、ファイトやで!!
          なんでも愚痴ったらええねんよ。

  3. 小魔女 より:

    先生のブログから斉藤陽道さんを知って、NHKのおかあさんといっしょの幼児番組のエンディング曲の作詞されてる方だ〜!と気がつきました。この歌は歌詞に合わせて手話で歌のおにいさんとおねえさんが歌われるんです♪

    1. 奥薗壽子 より:

      そうそう、そうなんです。
      だから、写真展にも、小さなお子さんがたくさん来られていましたよ。

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