でいりいおくじょのBLOG

2020.02.07

読書日記「居るのはつらいよ」

この前、新聞に大佛次郎賞のニュースが載っていて

この本が大佛次郎書論壇賞を受賞したのを知り

ものすごく興味がわいて、読んでみました

 

「居るのはつらいよ」(東畑開人著  医学書院)

 

著者は京大の大学院卒、博士号をもつ方。

普通、そういう経歴の方って

卒業後は大学教員とか研究員とか、アカデミックなところでお仕事をされるんだけれど

 

この方は、臨床心理学が専門なので

現場を経験せずにアカデミックに入るのは堕落だ、と考え

カウンセリングができる仕事を目指すんです。

 

まじめで、熱い方なんです。

 

職探しの条件としては

カウンセリングを仕事としてできること

家族を養えるだけの給料をもらえること

場所はどこでもいい。

 

というものでした。

 

こんな条件なら、すぐに見つかるだろうと思いきや

臨床心理士という仕事は、とにかく給料が安い。

 

大学で4年、大学院で5年勉強し、博士号まで持っていても

臨床心理学士は高額歴ワーキングプアを地でいく仕事だったんです。

 

そんな時、たまたま見つけたのが沖縄のデイケアセンターの仕事で

ボーナス6か月分という破格の待遇。

これは行くしかないという事で、沖縄で働くことになります。

 

その沖縄のデイケアセンターでの日常を面白おかしく小説風に書かれているのがこの本です。

 

デイケアセンターには、さまざまな理由で普通の社会生活を送ることが困難な方たちが

毎日のように通ってきていて

そのメンバーさんと、センター側の職員とが

日々ぼーっとしたり、一緒に遊んだり、スポーツをしたり、行事をしたりしているんです。

 

その一つ一つは、笑えたり、ほのぼのしたり

面白おかしく読めます。

 

ところが、この本は、そういうほのぼのとした物語を書いている本ではなくて

実は、大きなテーマがあって

 

ケアとは何か

セラピーとは何か

という、学術的なテーマを研究した本なんです。

 

そのことが徐々に解き明かされていくにつれて

何気なく書かれていた、デイケアセンターの日常とか

そこで働く人と、そこに通ってきている人との関係とかが

面白くて、楽しくて、ちょっと笑えることばかりではなく、

だんだん違ったものに見えてきます。

それが、この本のすごいところ。

 

ケアとは何か

傷つけないように接し、

必要としていることをしてあげたり、依存を引き受けたりして

その人の日常を支えてあげること

 

セラピーとは何か

傷ついていることに向き合って、

それに向き合うために、その人がどう変わっていく必要があるかという事を、

一緒に考え、手助けし、その人の成長と自立を目指すこと。

 

ざっくりいうとそういうことになるそうなのですが

事は、そう簡単に割り切れらないところが、ややこしい。

 

結果として、著者はこのデイケアセンターに4年間勤め

まじめに一生懸命向き合って、その間論文も書き

とにかくまじめに頑張って頑張って頑張って

 

そうして自分自身がボロボロになる。

 

そのボロボロになっていく部分の話は

もう、息が詰まる感じで

読みながら、私がぼろぼろ泣きました。

 

なんで、まじめに一生懸命生きている人がむくわれないのか

この福祉という世界を取り巻く、なんとも言えないグレーなシステムに対して

怒りとも、やりきれなさとも言えない気持ちになりました。

 

ケアをしているつもりが、実はケアをされている側でもあり

セラピーをしているつもりが、セラピーをされている

しかもケアとセラピーの境界線はあいまいで

ケアーであり、セラピーでもあったりする。

 

ケアをしつつ、ケアをされ、セラピーをしつつ、セラピーをされる

境界線のあいまいな2つのものが、どんどんどんどんつながって

ぐるっと輪のようになり、蚊取り線香のように渦巻になる

そこが、きっと居場所となり、

そういう場所ならば、きっと、何も考えずにいること、ただいることができる。

 

けれど、損得勘定とかで、このつながりが切られた時

(私、する人、あなたされる人、というように)

蚊取り線香はバラバラになり、

そこに居場所はなくなる。

 

普通に、何も考えずに、ぼーっとしていられる場所

それは、決して自分だけで作れるものでないという事がわかったし

それは、決して当たり前じゃない。

そのことが分かっただけでも、この本を読んでよかった。

 

臨床心理学を言うものを知らない私のようなものが読んでも

分かりやすく、しかもいろんなことを考えるきっかけになります。

 

居場所があるというの

そこにいさせてくれる誰かがいてくれるからだという事

それは、実はとてもありがたいことで

決して、当たり前じゃない。

 

もしも、誰も自分に興味がなかったり

無視されている状態だったりすれば

途端に、そこは自分の居場所でなくなるのですから。

 

誰かを気にかけること

それが、始まりで

そのことが、居場所を見つけるきっかけになるのかもしれません。

 

ケアとセラピーって

学術的な難しいことじゃなくて

もっと簡単な人とのかかわり方みたいなことでもあるので

参考になる部分はたくさんあります。

人との距離感のようなことを知りたい方にもお勧めの本です。

 

2020年2月6日読書日記1

コメント

  1. 相馬ひろみ より:

    今日、保健所に行き、担当の医師からこの本を紹介されまして購入しようと探していたところです。大変参考になりました、ありがとうございます。

    1. 奥薗壽子 より:

      この本は、本当にいい本ですよ。
      いろんなことを、考える本になりました。是非読んでみてください。

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