でいりいおくじょのBLOG

2020.02.18

読書日記「ある男」

前から読みたい読みたいと思いながら

なかなか読めなかった本をようやく読むことができました。

 

「ある男」(平野啓一郎著 文藝春秋)

 

平野啓一郎さんといえば、映画でも話題になっている「マチネの終わりに」の著者。

「マチネの終わりに」もかなり面白かったのですが

この本は、それとはまた違ったテイストで

ミステリー的要素が入っていることもあって、

つづきが知りたくて知りたくて、読まずにはおれないような面白さでした。

 

久しぶりに、夜更かししての一気読みです。

 

まず、この本のストーリーをざっくりと。

 

弁護士の城戸は、

昔、仕事でかかわったことがある里枝という女性から奇妙な相談を受けます。

 

里枝の亡夫の大祐が、実は別人だったというのです。

 

詳細はこうです

里枝はいろいろ事情があり大祐という男性と再婚し

子供も生まれて幸せに暮らしていたのだけれど

突然夫が事故で亡くなってしまうんです。

それで、大祐の実家に連絡したところ

その人は、大祐ではなかった・・。

 

亡夫はいったい誰なのか。

 

城戸がその相談を受け、それを解明していくというのが

この本の核となるストーリーです。

 

…とここまで書くと

なんか、よくある話やん、それ、って感じなんですが

違うんですよ、ぜーんぜん違う。

 

いやいやいやいや、深いんです。ものすごく深くていろんな問題提起がされている

 

人種問題、戸籍というものの不確かさ、法によってさばけるものと守られるもの

死刑制度の是非

といった、社会の問題にも鋭く踏み込んでいて、考えることが盛りだくさん。

 

人格というものは、何で形成されるのか

という大きなテーマにもぶつかる。

 

生まれ育った環境?あるいは遺伝子?

いや、そういうものとは全く関係ない、世の中のうわさやネット情報

のようなもので、作られている場合もある。

 

更に、人が人を愛するとき、その人の、どこからを愛しているのか

出会った時からか

その前のところ?

あるいは、自分ではどうしようもできない、過去の思い出や、DNAに組み込まれた習性とか、

そういうものまでを含めて全部、愛する必要があるのか。愛せるのか。

 

考えるべき問題は、たくさん出てきて

見えているようで見えていなかった、社会の暗部というか、ひずみというか

そういうものに気づかされ

テーマとしては、かなり重いものもあります。

 

でも、ミステリータッチで謎解き要素も多いので

本当に一気に読めます。

 

更に!!

読み終わった後、もう一度、最初に戻って序の部分を読むと

更に、ワオ~~~~~~って思う。

 

ルネ・マグリットの<複製禁止>という絵の話が書かれているんですが

姿見の鏡を見ている男がいて

その鏡に映っている男もまた背を向けて同じ鏡の奥の世界を見ているという作品。

 

鏡に映った男は、その男ではあるけれど、正確にその男の姿を映しているわけではない。

(実際は、正面を向いていないとおかしいでしょ?)

 

多分、そんな風に、

見えている世界は、常に別のフィルターを通して見えていて

何かが少しずつ、違っていたり、ゆがんでいたり、見えていなかったりする。

つまり、わかっているようで、分かっていない。

 

だからといって、見るのをやめるのではなくて

だからこそ

実際に会い、顔を見て、言葉で伝えて、自分で感じ

全てがわかっているわけではなくても、わかっている部分で信じあう事

それが大事なんだと思った。

 

SNSが身近になって

人は近くなったようで遠くなっているなあと思う。

もっとリアルに人と会い、実際に口で話をしないとね。

そうしないと、見えないものに惑わされる。

そこがスタートラインですね。

 

本当に考えさせられること、思う事

盛りだくさんの本で、思うように書けないのがもどかしい。

 

とにかく是非是非読んでみてください。

本当におすすめです。

 

2020年2月17日ある男

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