家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
京都人なので、何でもかんでも油揚げを入れてしまう習性があります。
油揚げはうまみとコクをプラスしてくれるので
煮ものでも味噌汁でも麺類でも、いれるだけでおいしくなりますね。
ところが油揚げって、めっちゃ貪欲で
調味料をわれ先に吸っちゃうんですよね。
例えば、煮びたしを作るときに
青菜と油揚げと調味料を入れて一緒に煮ると
青菜は水を出してからでないと味が入らないのに対して
油揚げは最初からガンガン吸っちゃう。
以前は、その性質を利用して
わざと油揚げに味を含ませてから、そこに青菜を入れて煮る、
という風に二段階で煮びたしを作っていたんです。
そうすると、しっかり味の油揚げと、薄味の青菜というメリハリのある味に仕上がり
それはそれでおいしいんですね。
でも、そのやり方だと、どうしても余分に調味料を入れることになる。
今の時代
出来合いのお総菜や、外食、中食など、自分で料理したもの以外を口にすることも多いですね。
市販品を利用したり外食したりするときは、あまりストイックにいろんなことを考えずに、
ありがたく、おいしく、楽しく食べることを優先したほうがいいと思うんです。
その代わり、家庭で料理するときは
ほんの少し、塩分やカロリーを控える工夫をしてみる。
作って食べること、作らないで食べること
どちらが上とかしたとかいうんじゃなくて
いかに生活の中でうまくバランスをとって暮らしていくかってことが大切で
手作りするときにほんのちょっと工夫することも必要なんじゃないかと思うのです。
でもね
あまりにもあからさまに、薄味にしなくっちゃとか、カロリー控えめにしなくっちゃ
と、がんばりすぎてしまうと
作るほうも、食べるほうも、いやになってくるので
さらりと、さりげなくやらないとね。
ほんの少し意識するだけで、あとは何にも頑張らなくて
ふつうに簡単に作れて、普通においしく食べて
結果、体の調子がいいわ・・・みたいな。
そういうのが理想ですね。
で、油揚げの話です。
そんなわけで、
最近は油揚げのこくやうまみだけを上手にいただきつつ
貪欲に味を吸わないように工夫をしています。
例えば、煮ものを作るときは
最初に油揚げと具材を味付けしないで煮ておいて
一番最後に調味料を加えることで、
味を強欲に吸うタイミングを与えないとかね。
麺類の時も、だしで野菜と麺と油揚げを煮ておいて
一番最後に味をつけるとかね。
煮びたしみたいに、最初から青菜も油揚げも調味料も一緒に入れちゃう場合は
一番上に油揚げをのせて
なるべく調味料を油揚げが出会わないようにするとかね。
そうすると、
油揚げのコクとうまみだけはちゃっかりいただいておきながら
油揚げに、余分な塩分を持っていかれないのであります。
たったこれだけのことで、
入れる調味料を少なくしても味を決めることができます。
でも、ここまで書いて、ふと気づいたこと。
貪欲ていうと、自分のことばっかり考えて
何でも自分のものにしてしまうような、意地悪なイメージですが
油揚げは、調味料をガンガン吸っちゃうけど、
その一方で、コクやうまみを吐き出して、料理全体にきちんと貢献しているわけですから
やっぱり、油揚げはいいやつですね。
貪欲・・・。
うん、貪欲も本当は悪くないかも。
新しいこと、知らないことに対して貪欲に好奇心を持つ。
貪欲に、いろんなことを吸収する。
そうして、自分の中から、独特なうまみやコクがにじみ出てきたら
それって、ちょっと素敵なことじゃないかな?
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今日の「日めくりレシピ」は「小松菜とえのきと油揚げの煮びたし」
具材を重ねて入れる順番がポイントです。