でいりいおくじょのBLOG

2020.04.15

読書日記「ペスト」

今の社会情勢とそっくりという事で

異例のベストセラーとなっている本。

「ペスト」(カミュ著 新潮社)

を読んでみました。

 

ペストというのは、ネズミが媒介して伝染する病気のことです。

かつて、世界で最も恐れられていた病気で

何億人もの死者を出したといわれています。

 

アルジェリアのオランという町で原因不明の熱病者が続出。

医師はペストだと診断するのだけれど

市はペストだと認めません。

 

そのことで、対処が遅れ、結果として病気を蔓延させてしまうことになり

多くの死者が出て、市は封鎖されることになるのです。

 

ここまで読んだだけでも、コロナの状況とすごく似ていて

息がつまりそうになります。

 

閉鎖されたことで、外部との連絡が一切絶たれ(手紙は出せなくなり、連絡手段は電報のみ)

自分だけ、何とかして、この町から抜け出そうとする人や

まだ、事の深刻さをわかっておらず、相変わらず、カフェでお酒を飲んだり

夜になれば、劇場に出かけ、寂しさを紛らわそうとする人々。

そのことで、ますます病気は広がっていくわけです。

 

ある夜、オペラの劇場でオペラの俳優がペストで倒れたことで

初めて、ペストが現実のものとなり、恐怖を感じ始める人たち

 

しかし、この時点では、もうすでに医療崩壊ははじまっていて・・。

 

この小説が書かれたのがは70年以上前ですが

人間の行動パターンというのは、ほとんど変わっていないことに、まず驚き

今の現状と重なることが、本当に多いです。

 

小説の中にはいろんな人が出てきます。

 

主人公のリウーは医者で

結核の奥さんがいて、本当は奥さんについてあげたいのに、ペストの人たちの治療に奔走しています。

(現場でペストと戦っている人)

 

コタールは密売人で

警察に捕まりそうになり、追い詰められて自殺を図るんだけれども助かるんです。

そこで、ペストで世の中がひっくり返ると

逮捕されないどころか、密売の仕事で大儲けすることになり

ペストが収束しないことを強く望むようになります。

(自分の利益のために、ペストの蔓延を喜んでいる)

 

ランベールという新聞記者は

自分は仕事でたまたま来ただけの人間だからと

何とか、自分だけこの街を抜け出そうとして、

でも、結局、病人を助けようとくたくたになりながら仕事をしている医者のリウーを見て

自己中心な考えを改め、その手助けをかって出ます。

(最初は当事者意識がなかったのに、途中で意識が変わった人)

 

タル―は旅行者なので、ランベールと同じように外部から来た人間なのですが

医療の現場で病人と接する危険な手伝いを、自らかってでるのです。

(最初から誰かの役に立とうとする誠実な人)

 

下級役人のグランは、役人としてはやる気のない人なのですが

ペスト患者の手伝いは、なくてはならないほどの働き手となります。

(ペストの蔓延によって、自分が必要とされている場所を見つける)

 

これ以外にも、いろんな登場人物が出てくるのですが

非日常の中で、その人の本性というか人間性が試されますね

 

自己中心的に、自分の利益のみを求める人と

自分以外の人のために動ける人と

それまでの普通の時とは、全然違う人間性が見えたりする。

 

自分はどういう人間なのか、そこが問われる。

 

また、こういう人間性とは別に

治療と予防が大事だという事も、あらためて思いました。

この二つが、収束に向かうために不可欠な両輪ですね。

 

この小説が書かれたときは、まだ予防医学という概念が確立していなかったのか

小説の中では予防の方が、ほとんど徹底されていなかったために、

収束まで、ものすごく時間がかかったように思いました。

 

今は、予防が治療と同じくらい大事だというのは、もう常識です。

 

治療に当たれるのは、その知識と資格を持った方々だけですが

予防の方は、すべての人がやれます。

 

うつさない事、うつらないようにする事

たったそれだけの事。

この二つに注意することで、もう片方の歯車の役割を果たせる。

みんなで力を合わせて、両輪になる。

そうやって、両輪で頑張ることが本当に大切。

 

一人一人が、誠実に立ち向かうこと。

これに尽きるのかなと思いました。

 

それにしても

非日常の世界では

それまで見えなかったものが、色々見えてきますね。

この機会に、自分自身の心の中も、じっくり観察してみたいとも思いました。

 

自分にとって、大事なものは何か

自分が本当にやりたいことは何か

自分は本質的には、どういう人間なのか。

この非日常の中だからこそ、見てくることがあるように思いました。

 

世界的な名作といわれているだけあって

本当に深く、いろんなことを考えさせられました。

 

非日常の中で

人は、何を守り、何と戦うのか

最後に守るべきものは何か。

極限状態に置かれて、自分は最期まで誠実さを失わずにいられるか

 

翻訳ものなので、日本語が読みにくいところもかなりありますが

一読の価値ありです。

2020年4月14日本2

ずーっと前に買って、一度読みかけて挫折

今回、再チャレンジして読み終わりました。

 

コメント

  1. たまちゃん より:

    でいりいおくじょの、日めくり、など毎日楽しみに読ませて頂いています。
    それにしても、すごい読書量ですね!
    Kindleなどで?それとも全て蔵書?ですか??
    感想を参考に私も読んでいます!
    ありがとうございます!

    1. 奥薗壽子 より:

      いつも読んでくださって、ありがとうございます。
      本は大好きで、昔はバンバン買っていたのですが
      本を詰めすぎて、本箱4つが崩壊寸前になり、地震でも来れば大変なことになるという事で
      2年ほど前に、思いきって1/3くらいに減らしました。
      それでも、部屋には本箱が6つあり、たぶん数百冊はあると思います。
      できるだけ増やさないように気を付けていて、電子書籍もかなり利用しています。
      紙の本も本当は好きなんですが、東京は地震も心配なので、悩むところなんです。

  2. コト より:

    こんにちは。
    以前、頭のゴミを、、、でコメントしたものです。
    今回のこの本に対する奥薗さんの感想を読み興味が湧きました。
    人間は何年経っても根本的には変わらないものなんですね。
    自分にとって何が一番大切か、、。
    近いうちに購入し読んでみたいと思います。

    1. 奥薗壽子 より:

      世界的な知の巨人カミュの作品なので、かなり哲学的なのに加え
      ちょっと古い翻訳なので、日本がかなり読みにくいです。
      日本語訳が難解すぎて、一度挫折しての、再チャレンジでした。
      今のこの時期に読むと、本当にリアリテイ―があり
      いろんなことを考えました。頑張って読んでみてください。

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