でいりいおくじょのBLOG

2020.05.05

読書日記「幻夏」

最期の一行まで、一気読み。

読み終わった後は、涙が止まりません。

あの夏の日のことが、いつまでもいつまでも心の中に残ります。

 

「幻夏」(太田愛著  角川文庫)

 

ちょっと前に読んだ「犯罪者」(上)(下)に出てくる

相馬、鑓水、修二の3人が引き続き登場する作品。

 

本当は、この「幻夏」が読みたかったのですが

順番としては「犯罪者」読んでからの方が、人間関係がよくわかるという事で

「犯罪者」を先に読んだのですが

これが想像以上に面白かったので、

「幻夏」は期待値MAXで読み始めました。

 

はっきり言って、一気読みです。

 

読み始めたら、あまりの面白さに、

寝るのが惜しくて、読むのがやめられず寝不足なりました。

 

ざっくりあらすじを説明すると

 

今回の主人公は相馬です。

(「犯罪者」の主人公は修二でした)

 

23年前の夏休み

1学期の終わりに転校してきた尚と拓。

たまたま友達になった相馬は、

小学6年生の夏休みの日々を秘密基地で一緒に過ごすことになるのです。

この辺は、まるで、映画スタンドバイミ―のような世界です。

 

ところが、

新学期が始まった最初の日、忘れ物を取りに帰った尚が

そのまま行方不明になってしまう。

 

最後に目撃されたのは、その日の夕方、川のそばで思いつめたように立っている姿。

そして、その次の日、川のそばにはランドセルと謎の暗号が残されている。

しかも、ランドセルの中身は、行方不明になった次の日の時間割だった。

 

実は、その数日前

相馬は、尚から父親が殺人犯だという事を打ち明けられるんだけれど

実は、その殺人事件は冤罪で(尚はそのことを知らない)

冤罪なのに、服役し9年間も牢屋に入っていた。

 

そして、尚の失踪の前に、その父親が謎の死を遂げる。

ぎゃ~~~~~~っ!!

 

父親の死と、なおの失踪には、どんな関係があるのか

尚にいったい何が起こったのか

 

そして、23年後、一人の少女の誘拐事件が起こり

その現場から、同じ暗号の文字が‥‥。

ひええええええ~~~~!!!

 

今回も、まったく先が読めないんだけれ

起こっている物事の、あれとあれは確実に、何か関係がありそうな予感がむずむずして

例によって、話が進めば進むほど、いろんなことがどんどんこんがらがってくる。

 

私、途中で暗号の解読が出来ちゃったんだけれど

でも、その暗号が解けたところで

全体がわかるほど、単純なストーリではなく

 

わかった!って思ったら、それは、ほんの端っこの方のこんがらがりが、ちょっとほどけた程度に過ぎず

おお~、これはもしやって、ひらめいたことも全然違っていて

 

本当に、本当に、最後まで全貌がつかめず

ドキドキ、ハラハラが止まりません。

 

しかも、最後は泣けるんです。

ミステリーって、こんな感動して泣けるようなジャンルだったけ?

っていうくらい、もう心の中をぐちゃぐちゃにされる。

 

読み終わった後に、心に残ったことは

罪とは一体何なんだろう、という事でした。

 

法で裁ける罪と、法で裁けない罪があって

法で裁けないからといって、無罪と呼べるのか。

法にはふれないけれど、限りなく邪であり、卑劣なことはある。

 

法にはふれないけれど

それによって、ささやかな幸せを崩されてしまったり

人生がくるってしまうようなこと

それはに対して、どうやって抗えばいいのだろう。

 

やりきれない気持ちのまま、生きていくのか

復讐をするのか

けれど、相手が同じような不幸な目に合ったところで

何一つ変わらない

 

いろんなやりきれない気持ちでいっぱいになる一方で

少年たちの過ごした夏のまぶしいくらい無垢な時間が

いつまでも心の中の残像として残りました。

 

ちょっと重たいテーマではありますが

夢中で読み進められる一冊。

おすすめです。

 

2020年5月4日幻夏

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