でいりいおくじょのBLOG

2015.11.03

ほうとう

無知ほど怖いものはないというか

今思えば、本当に無謀というか

かれこれ10年ほど前、

東京の一流レストランのシェフと料理対決する番組に出演していたことがあるのです。

名前を聞いただけで、おおーっていうような一流店に行っては

そのお店の看板メニューを

奥薗流で作る、っていう企画です。
 

あの当時、はっきり言って超田舎者だったし

お金もなく、子育ても忙しく

また、ネット情報がそれほど普及していなかったので、

そのレストランが、どんなにすごいところなのかも、まったくわかっておらず

ただ、食べ物屋さんに行って、自分の料理を作って帰ってくるだけって感じで料理していました。
 

今、そのお店の名前を聞いたら、

そこで料理を作るなんてこと、怖くて絶対やれません。

知らないって、無敵ですね。
 

あの当時、どこから見ても、普通の主婦で

料理研究家としての風格とか、そういうのも何にもなかったからだと思うのですが

(今でも、そう変わらないけど…)

シェフの皆さんは、ことごとく寛大で

たぶん、料理のセオリーからは外れまくったことをやっていたはずなのに

やさしく受け止めてくださったのは、今思い出しても感謝です。
 

そんな中で

あまりにも田舎者丸出しの私のことを、かわいそうと思ってくださったのか

料理に対するアドバイスをくださる優しいシェフもたくさんいらして
 

その言葉の一つ一つ、ありがたくて今でも心に留めています。
 

その中で、あるシェフがアドバイスしてくださったこと。
 

素材は丁寧に下処理をするのがおいしくするためには大事。

僕はね、家で豚汁を作るときでも

素材は全部一つ一つ下茹でして、最後においしいだしでさっと煮て作るんだ

奥薗さんも、そうやって、丁寧に料理をすれば

もっとおいしいものが作れると思うよ。
 

私は、その当時、すでに

昆布はチョキチョキ切り、鰹節は引き上げずにそのまま具として食べてしまう奥薗流で

野菜も、下茹でどころか、できる限り水にもさらさずに調理していたので

たぶん、料理の基礎も知らない素人と勘違いされて、教えてくださったのだと思うのです。
 

家に帰って

教えていただいた通りのやり方で、豚汁を作ってみました。

カツオと昆布は引き上げて、極上の一番だし。

野菜も肉も下茹で。
 

出来上がった豚汁は、確かにお店屋さんで出てくるような品のいい一品になりました。
 

でも、シェフには申し訳ないけれど、これは私の目指している料理ではないなと思ったんです。
 

名店の料理というのは、余分なものを排除して排除して

一番おいしいエッセンスだけを、いかに取り出して、一皿に凝縮するかということが

シェフの腕の見せ所であり

品がよくて、最高のうまみを味わえて、値段も高くなるゆえんだと思うんですね。
 

でも、家庭料理は、排除ではなく

受け入れて、受け入れて、受け入れた、受け入れて

いいことも、悪いことも、ことごとく受け入れて、

そのうえで、すべてを調和させる料理だと思うんです。
 

うれしいことも、悲しいことも、いやなことも、楽しいことも

全部をドーンと丸ごと受け入れるからこそ、

我が家というのは、居心地がよく、温かく、やさしい気持ちになれる。
 

家庭料理というのも、そうでなくっちゃと思うのです。
 

いろんな雑味を全部取り入れる懐の深さが、おいしさにも、ほっとする気持ちにもつながる。

あの時感じたことは、今でも、ちっとも変っていません。
 

そんなことを思いながら、今日はほうとうを作りました。

基本はカボチャ入りの豚汁

そこに、今日は、手打ちの麺を入れました。
 

豚汁は

土鍋に、昆布と水と煮干しを入れて弱火にかけ

火にかけている横で、野菜を切ってどんどんその中に入れていき

(今日の具材は、玉ねぎ、にんじん、大根、ネギ、ゴボウ、油揚げ、しめじ。

かぼちゃは煮崩れるので、あとで入れる)
 

全部入ったところで、中の煮汁が沸騰するまで待って

沸騰してきたら、豚肉を入れます。

豚肉に火が通ったらカボチャを入れ、再び沸騰してきたら蓋をし

一呼吸おいて火を止めます。
 

この火を止めるっていうのがポイント
 

火を止めて余熱で火を通すことで

野菜のおいしい旨みがぐっと引き出され

雑味やアクは出ず

肉は固くならず、カボチャは煮崩れません。
 

蓋をして、火を止めて、あとは、各素材の持っている底力を出してもらって

素材の力を借りて、おいしくしてもらう。

私の力でおいしくするのではないのです。
 

たぶん、家族との関係、子育ても、同じようなことなんじゃないかな。

だからこそ、家庭料理は、このやり方で、いいのだと、最近は心からそう思っています。
 

食べる人がそろったところで

再び火にかけ、ふつふつしてきたところで手打ちのほうとうを下茹でなしでいれ

(ほうとうは、麺を下茹でしないで入れることで、汁に独特のとろみとコクが出ます)

弱火で3~5分くらい煮たら

最後に味噌を溶きいれ、ネギを散らして出来上がり。
 

ぐつぐつしているのを食卓に運んで、みんなで取り分けつつ食べれば

心も、体もポカポカ。

これからの季節に、おすすめの一品です。


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今日のお弁当

ささみのチーズパン粉焼き
人参とごぼうと竹輪のきんぴら
梅マヨポテトサラダ
蒸しブロッコリー
卵焼き、ミニトマト

きんぴらも、余熱調理がおすすめ。
具材をごま油でさっと炒めたら、ふたをして火を止めます。
このやり方だと、火口から外して、ほったらかしで野菜が柔らかくなるので
空いた火口でみそ汁を温めたり、別の料理を作ったりできるし
蒸し焼きになるので、しっとり柔らかく仕上がるのです。

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