でいりいおくじょのBLOG

2014.12.27

鍋物にキャベツ!!


子供のころ、鍋ものといえば

白菜、春菊、ネギ、シイタケというようなお決まりの野菜があって

それ以外の選択肢とか、あまりなかった気がするんです。
 

だから、20年位前に、もつ鍋がブームになって

(当時、北九州に住んでいた)

博多でもつ鍋を食べた時は、

おおー鍋にキャベツかー、と思ったものでした。

キャベツって、なんかちょっと洋風な感じがあって

鍋ものに入れるイメージがなかったんですよね。
 

食べてみると、白菜より甘みもうまみも食べ応えもあって

モツのぷりぷりした食感とも脂のコクともよく合って

よくぞ、キャベツを入れてくれはりましたーって感じでした。
 

ところが、その後
 

「世界の野菜を旅する」(玉村豊男著 講談社現代新書)
 

という本を読んでいたら

鍋ものにキャベツを入れるのは、九州の水炊きから始まったというような話が載っていて、へえ~と思ったのでした。
 

それによると
 

博多名物、水炊きにキャベツを入れるというのを発明したのは

博多の中州にあった料理屋の林田平三郎という人で

明治38年のことだそう。
 

林田氏は15歳で香港に渡り、イギリス人の家で住み込みで料理見習いをし

中華と洋食の両方を習った
 
10年ほどして帰国し、中洲の料理屋で働くようになった時に考えたのが

水炊き。
 

骨付きの鶏肉を水から炊いて、じっくり濃厚なスープを取って

そこにキャベツなどの野菜を入れて、橙としょうゆのポン酢をつけながら食べるスタイル。

これが大当たりして大繁盛したそうな。
 

なぜキャベツを入れたかというと

林田氏は、料理修行をしていた香港でキャベツが普通に使われていた。

というのも、香港を統治していたイギリスは、ブリテン島がキャベツ発祥の地なので

イギリス人は白菜よりもキャベツを好んで食べたと考えられる。
 

これを読んだとき

私は、常々持っていた疑問が解けたような気がして
 

というのも、水炊きというと、実は、関西のものと思っていて

特に京都のでも水炊きは最もよく食べる鍋物の一つ。

私が子供のころには、鍋物といえば、水炊きかすきやきで、そんな鍋料理にバリエーションとかなかったし。
 

だから、博多名物、水炊きといわれると

京都も水炊き名物ですけど…。といいたくなってしまうわけでして
 

でも、博多の水炊きと、京都の水炊きは、全く別物
 

まずスープ。

京都の水炊きは、透明で癖がなくあっさりとしているのにうまみの強い鳥のだし汁を使います。

野菜は、いろいろあるけど、基本は白菜。キャベツは入れない。
 

一方博多の水炊きは 白濁した豚骨スープ風の鶏がらスープで

見るからにこってりしてるんだけど、コクがあって意外にしつこくない。

野菜は、キャベツが入る。
 

この鳥のスープの決定的な違いは

スープを取るときに、沸騰させて煮だすか、沸騰させないでうまみを引き出すかの違いで

沸騰させると、骨の髄からうまみが出てどろりと白濁したスープになるんです。
 

鶏の水炊きって、日本料理だと思っていた私は

白濁した豚骨風の鳥スープを見た時、なんか中華料理みたいなスープやなあと思って

実はそれにものすごく衝撃を受けたのでした。
 

でも、この本を読んで、中華料理みたいな、ではなく

中華料理の手法を使って考えられた鍋料理が博多の水炊きだったのだということがわかって

なんか、もやもやしていたものが、すっとしたのでした。
 

だから、水炊きにキャベツも、洋風のポトフーやブイヤベースからの発想だと思えば

あ、そうか、とすごく納得できたのです。
 

結局、香港で中華と洋風の料理を修業された方が

日本に帰ってきて、日本の鍋料理と、中華のスープの技法と、洋風の食べ方をミックスしてできあがったのが、博多の水炊きだったと。
 

だから、博多のもつ鍋も、白菜ではなく、普通にキャベツが使われたんでしょうね。

キャベツのほうが絶対合うし。
 

で、あのもつ鍋が全国的なブームになったおかげで

鍋ものにキャベツというのも、結構当たり前になった気がします。
 

その後、カレー鍋とかのブームが来て

レタスとか、トマトとか、セロリとか、サラダ野菜を鍋ものに入れるのも

当たり前になりましたねえ。
 

考えてみたら

料理って、知らない間に固定概念に縛られていることがあって

これにはこれを入れなくっちゃとか、これはこうやって作らなくっちゃとか

結構、知らない間に、そこに縛られて、抜け出せないでいることがあるのかも。
 

自分のやっていることが、固定概念でがちがちになっていることにさえ気づいていない場合が多いんだけど

だからこそ、誰かが、こういうのもありなんじゃない?って言ってくれたら

意外に、自分の周りにがちがちに固まっていて壁って

あっけなく壊すことができて

なーんだ、これでよかったのか、ってことになる。

壁がなくなったら、うんと楽しくて、どんどん可能性が広がる。
 

特に家庭料理は、見えない壁がまだまだたくさんあるような気がしていて
 

鍋ものには、白菜でなくてもキャベツでもいいんだよっていうように

さらりと壁を壊す作業をやれたらいいなと、私はひそかに企んでいるところです。
 

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機能の「日めくりレシピ」はキャベツをたっぷり入れた
 

「もつ鍋風豚とキャベツの鍋」でした~。
 

今日の「日めくりレシピ」は「焼き大根」

今日と明日は週末スペシャル!! 聖護院大根です。
 

かぶのように丸い形をしていますが、大根です。

きめが細かくて、煮るとめっちゃ柔らかくて甘くておいしい!!

油揚げと炊くのもおいしいんだけど、今日はフライパンで焼いてみました。

水上勉さんの世界です。

しみじみ、大根のおいしさを味わえます。
 

「日めくりレシピ」はツイッターでも毎日紹介しています

奥薗壽子で検索してみてください。
 

なお、日めくりレシピは、年末年始も休まず更新しますので、チェックしてみてくださいね。

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