でいりいおくじょのBLOG

2016.05.09

読書日記「安閑園の食卓」&什錦全家福大麺

ゴールデンウイークは、どこに行っても人が多いので

家で読書&料理三昧!と決めていました。
 

前から読みたいと思っていた本を、じっくり読むのもいいものです

そんなわけで、今日読んだのは

「安閑園の食卓 私の台南物語」(辛永清著 集英社文庫)
 

辛永清さんは、日本で活躍された料理研究家。

お父上が、台湾の総督府の要職についておられた関係で

幼少時代は台南市郊外の安閑園という名前の大きなお屋敷に住んでおられて

その時の台湾の暮らし向き、料理のことなどを書かれたのがこの本。
 

日本にきて、料理研究家として活躍されていたのが1980年代くらい。

2002年に亡くなられているので、実際の料理の記憶は、

それほどはっきりと残っていなかったのですが

ちょっと前、「きょうの料理」で、辛永清さんが料理をされているのを懐かしい映像を拝見し

前から読みたいと思っていたこの本のことを思い出したのでした。
 

その映像の中で作っておられたのが、白菜のカニあんかけで

白菜を大きいまま柔らかくゆでたものに、カニのあんをかけただけのシンプルな料理なのですが

私は、なんだかとっても中国っぽいなあと思いました。
 

まず、白菜を大きなままゆでるというのは、まず日本の料理ではやらないし

白菜というのが、中国でとてもポピュラーな野菜で

浅田次郎氏の「蒼穹の昴」という小説の中でも西太后の好物として登場しているし

そういう意味では、おもてなしの主役級野菜として、悪くないはず。
 

さらに、大皿の盛りのあんかけ料理は、日本料理だと、どのタイミングで食卓に並び、どんな風に食べるのか、想像ができないのですが

中国料理だと、

鶏肉、豚肉、魚などのメイン食材を使い

さらに、味付けや調理法が重ならないように配慮して料理が供されるので

こういうシンプルな味付けで、あっさりした料理なら

どんな料理とも組み合わせやすく、見た目も華やかで、

きっと、どんな方にも喜ばれること間違いなく

おもてなし料理として、本当に万能といえる料理。
 

さすがに、小さなころから料理に関してしっかり教育された方で

おもてなし上手だなということが、この一品から本当によく伝わります。

さすがだなあと思いました。
 

さて、「安閑園の食卓」の本の話なのですが
 

庭園も農園もある広大なお屋敷に

親族と使用人とが一緒に暮らしておられるため人数が多く

そのため、作る料理の品数も、量も、それにかける手間暇も、とにかくすごいことになります。
 

特に、ワーッと思ったのが

血を使った料理と内臓の料理。

とにかく、鶏も豚も、生きているのを解体するところから始まるので

血液も脳みそも、内臓もすべて食べつくすのです。
 

辛永清さん、御自身は日本に来られて

ご自身の手で息子さんを育てるために、料理研究家としての仕事を始められる当時の話は

ちょっと、せつなくなることも書かれているのですが
 

この本で書かれていることで、一番心に響いたことは

料理すること、食べることを通して

家族が仲良く暮らし、人と人とがつながっていき

お腹が満たされ、気持ちが満たされていれば、人は幸せであるということ
 

台湾での、ごちそうの数々、暮らしぶりは、庶民とは大きく違っているかもしれないけれど

みんなで分け合って、おいしいものを食べ、同じ時間を過ごすということの中にこそ

豊かさがありますね。

私も毎日のあたりまえの食事を、もっともっと大切にしたいなと思わせてくれる本でした。
 

この本の中で紹介されているレシピの中から
 

什錦全家福大麺というのを作ってみました。

これは、誕生日とか、年越しとか、お祝い事のある時にはならず作られるというあんかけそばだそうです。
 

レシピによると、

ねぎ、豚肉、ニンジン、大根、タケノコ、干ししいたけ、干しエビをさっと炒めて、スープで煮て

水時片栗粉でとろみをつけてから溶き卵を回しいれてとろみをつけたものを

ゆでた中華めんにたっぷりとかければ出来上がり。

味付けは、しょうゆです。
 

豚肩ロースは塊のものを1センチくらいのさいの目に切り、大根も人参もさいの目に切ると書いてあったのですが

麺にかけることを考えれば、せん切りのほうが麺にからみやすいのではと思い、せん切りにアレンジしました。
 

たぶん、日本のような薄切り肉はなく、

まして、自分の家で解体している肉を使っておられるので、そうなるとさいの目切りのほうが簡単なのかな?、

肉がさいの目切りだと野菜もそれに合わせてさいの目に切られたのかなあと想像し

それなら、ここは切り方を変えてもいいのではと思ったのでした。
 

スープの旨みのベースは、干しエビと干しシイタケの戻し汁

そして炒めた豚肉からの旨み、タケノコもいい味が出ます。
 

量がたっぷりあることや、たくさんの種類の具材を使うことや

何重にも旨みを掛け合わせて濃厚な味を作り上げていくあたりが、いかにも中国料理的で

そうすることによって、快楽的なご馳走感を演出し

まさにお祝いムードを盛り上げてくれる一品になっているって感じです。
 

干しエビの濃厚なうまみに、干ししいたけや豚肉の旨みがかけ合わさって

まさにうなるほど濃厚なうまみです。
 

とろりと柔らかく煮えた大根と、しゃきしゃきの筍と、ふんわりとした卵と

絶妙な食感が組み合わさった案が、つるつるの麺にうまくからみ

そういった、食感の妙も御馳走感を盛り上げてくれます。
 

おいしかった~、ほんとうにおいしかった~。

手をかけただけのことはあります。

大、大満足できる一品でした。
 
 

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